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歯科におけるボツリヌス療法

歯科におけるボツリヌス療法

ボツリヌス療法とは?

ボツリヌス療法とは、グラム陽性偏性嫌気桿菌であるボツリヌス菌が産生する菌体外毒素/ボツリヌス毒素を有効成分として筋肉内に注射する治療法です(ボツリヌス菌そのものを注射するわけではないので、ボツリヌス菌に感染する危険性はありません)。

ボツリヌストキシンには、神経から筋肉への伝達を抑制する働きがあり、以下の3つが主要な働きとしてあげられます。

・筋肉の筋緊張を緩める

・疼痛を和らげる

・分泌腺からの分泌物を抑制する

作用は可逆性のため、数ヶ月程度で効果は徐々に減弱しますが、複数回の治療により効果の持続期間が長くなる傾向があります。

歯科におけるボツリヌス療法

筋性の顎関節症や咬筋肥大の改善では、咬合力をコントローすることで、歯周治療、補綴治療、歯内療法、矯正治療、インプラントや義歯などで生じる様々な問題点などにアプローチすることができます。

ガミースマイルの改善では、歯の着色やプラークの付着減少、上顎前歯部の歯肉炎の改善、歯の唇側傾斜防止、コンプレックスの解消などが挙げられます。

また嘔吐反射や違和感によりマウスピースが装着できない方や、継続的な努力が必要となる認知行動療法が円滑に進まない方などでもボツリヌス療法は有用となります。最近では、脳性麻痺患者の口腔ケア向上と吸引チューブ破損防止、うつ病患者がストレスのため起こす食いしばりに対する筋緊張緩和など、多角的な側面から活用され始めています。

ボツリヌス療法の臨床効果

ボツリヌス療法の臨床効果としては、数日から1ヶ月前後で奏功し、数ヶ月持続します。一定期間を空けて反復投与することにより、底上げ効果が期待でき、個人差はありますが症状の再発まで徐々に時間がかかるようになる傾向があります。

※歯科においては、現在保険適応されている疾患はないため、治療を行う際には自費治療となります。

ボツリヌス療法のメリット

・反復治療によって効果の持続期間が長くなり、投与間隔も広がる傾向がある。

・薬物療法の原料あるいは中止ができる。

・マウスピースの装着、認知行動療法、理学療法の煩わしさから解放される。

・副作用がほとんどない。

・施術時間は10分程度と短い。

ボツリヌス療法のデメリット

・効果の奏功が弱い、あるいは減弱しても、基本的には2ヶ月程度は抗体産生防止のため、追加できない。

・内出血のリスク(1週間程度で消失)

・ボツリヌストキシンに限らないが、異物の注入によって軽度のアレルギー反応を起こすことが稀にある。

・投与部位を誤ると、効果が減弱してくる数ヶ月後まで元の状態に戻すことができない。

まとめ

世間ではボツリヌス療法は「美容診療」というイメージが先行している印象を受けますが、ボツリヌス療法は疾病治療として半世紀近い歴史があり、さまざまな疾患に活用されてきました。歯科においても新しいアプローチとして近年注目を集めています。

ボツリヌス療法により力のコントロールは補綴装置や口腔内の状態、咬合のバランスなどを基に、歯科医師だからこそできる科学的根拠を持って患者さんに提供できる歯科治療の1つです。

人はストレスを感じると、だるさ、動悸やめまい、血圧の上昇、食欲不振、睡眠障害など、さまざまな不定愁訴を生じます。同時に歯を食いしばって耐えそうとしますが、過度な咬合力は歯牙破折や顎関節症異常など、多岐にわたる症状を誘発します。ボツリヌス療法は美容外科などでは一般的ですが、お口周辺の問題を改善するためには、噛み合わせや顎の関節など、口腔内の状態を考慮する必要があります。歯科医院で実施するボツリヌス療法では、必要に応じて口腔内の処置を並行して行うことで、よりバランスのとれた総合的な治療が期待できます。

顎関節症の治療で、一般的なスプリントによる治療やかみ合わせ治療と合わせてボツリヌス注射を行うと、より短時間で顎関節症の症状を改善できます。

少しでも顎や顎関節に異常を感じている方は、お早めにご相談ください!

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